帯のキャッチ・コピーはとりあえず無視したほうがよいかもおすすめ度
★★★☆☆
この本の帯に「余命半年の宣告とともに数千万の保険金を受け取った人々。いったい彼らはそれを何に使い、残された命をどう生きたのか?」とあるのですが、実際に読んでみると受け取った保険金の額は数千万円というほど巨大な額では必ずしもありませんし、またこの生前給付型の生命保険を使って人生の最期をまれにみるほど個性的に締めくくった人々の体験談が書かれているわけでもありません。取材対象となった5組は自宅のローンを返済したり、高額な治療費を支払ったりすることに保険金を充てた程度で、とりたてて読者をはっとさせるような、いってみれば人生の最後をぱぁっと花開かせるようなことをおこなうわけではないのです。そうした体験談を期待してこの本を手にすると肩透かしを喰うかもしれませ!ん。
ただ、このルポが私たち読者に提示するのは、人間が人生の最後に安らぎを覚えられるのは家族の情に接していられるときだという、実にささやかでありながらも大切な事実なのです。そしてそのことを保障するためにある程度のまとまった金額が生きている間に必要であり、生前給付型生命保険というのがひとつの解決策になりうるということなのです。
むしろ、個性的ではない人々の末期(まつご)を描くことで、読者の多くに(生前給付に必要な)「余命告知」をみずからの問題としてみつめる機会を与える本であるといえるかもしれません。ただし、この本が「余命告知」への有効な対処法を書いているわけではありません。死ぬということは「アンチョコがきかない一度限りのテスト」なのですから。